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暴力団員による不当な行為の防止等に関する法律、いわゆる「暴力団対策法」は、それまで対処が困難であった民事介入暴力の取締りを効果的に推進するとともに、対立抗争による危険防止に必要な措置を講ずるために制定されました。
主な内容を紹介します。
暴力的要求行為・準暴力的要求行為の禁止
暴力的要求行為・準暴力的要求行為とは?
指定暴力団員が、自己の所属する指定暴力団の威力を示して行う暴力団対策法第9条各号に掲げる27形態の行為を「暴力的要求行為」と言います。
平成24年の法改正で、新たに不当に取引を要求する6つの形態が追加されました。
また、指定暴力団員以外の者が、指定暴力団の威力を示して行う同27形態の行為を「準暴力的要求行為」と言
います。
準暴力的要求行為を行うことが禁止されているのは
- 暴力団対策法に基づく命令を受けた者等一定の暴力団周辺者
- 元指定暴力団員
- 指定暴力団への利益供与者等
です。
指定暴力団員が他人に対し、準暴力的要求行為を要求したり、依頼したり、唆したり(教唆)、助けたり(幇助)しても規制の対象となります。
中止命令等の発出(命令違反は処罰)
●3年以下の懲役、500万円以下の罰金
- 指定暴力団員が、暴力的要求行為を行った場合
- 指定暴力団員が、指定暴力団員以外の者に準暴力的要求行為をさせた場合
- 指定暴力団員と一定の関係を有する者が、準暴力的要求行為を行った場合
これらの場合は、その者またはその指定暴力団員の上位の指定暴力団員(組長など)に対し、公安委員会が「中止命令」などの必要な命令を出して行為を止めさせることができ、この命令に従わない場合は、罰則が適用されるので、警察は、この時点でこれらの者を逮捕することができます。
依頼した市民も規制の対象
指定暴力団員に対して暴力的要求行為を行うことを依頼した人、その場に立ち会って、指定暴力団員を助けた人も同じ規制の対象になります。
組への加入強要、脱退妨害などに関する行為の禁止
中止命令等の発出(命令違反は処罰)
●3年以下の懲役、250万円以下の罰金
暴力団対策法では、指定暴力団員が次の行為をすることを禁止していますが、これに違反した者に対しては、暴力的要求行為の場合と同じく、公安委員会が
中止命令などの必要な命令を出します。この命令に従わない場合は、罰則が適用されるので、警察はこの時点でこれらの者を逮捕することができます。
その他の主な内容
暴力団の指定
都道府県の公安委員会は一定の条件を備えている暴力団を「指定暴力団」または、指定暴力団がいくつも集まった連合組織を「指定暴力団連合」という名称(このページでは、「指定暴力団」という表現で統一しています。)で指定します。
なお、暴力団対策法で規制される暴力団は、この指定暴力団に限られます。
指定にあたっては、学識経験者の意見を聴くなどの手続きが行われ、その後官報に公示されるので、指定された暴力団の名称、組長の氏名、事務所の所在地は、市民も知ることができます。
特定抗争指定暴力団の指定
指定暴力団相互間の対立抗争等が発生し、その対立抗争に係る凶器を使用した暴力行為が人の生命身体に重大な危害を加える方法によるもので、かつ、その対立抗争により更に同様の危害が加えられるおそれがある場合は、公安委員会は、当該指定暴力団を、期間(3 ヶ月以内)及び警戒区域を定めて「特定抗争指定暴力団」と
して指定します。(第15条の2)
指定後、警戒区域において
・事務所の新設、既存事務所への立ち入り、とどまり
・対立する組員へのつきまといや対立する組員の居宅・事務所周辺でのうろつき
・多数の集合
など一定の行為をすることが禁止されます。
禁止行為を行った場合は、罰則が適用されるので、警察は、この時点で指定暴力団員を逮捕することができます。(第15条の3)
●3年以下の懲役、500万円以下の罰金
特定危険指定暴力団の指定
暴力的要求行為を拒絶した相手方に対して、または損害賠償請求等の妨害行為に関連して、凶器を使用した
危険な暴力行為を行い、更に同様の暴力行為を行うおそれのある場合は、公安委員会は、当該指定暴力団を、期
間(1年を超えない範囲)及び警戒区域を定めて「特定危険指定暴力団」として指定します。(第30条の8)
指定後、警戒区域において
・暴力的要求行為や損害賠償請求の妨害行為
をした場合は、罰則が適用されるので、警察は、この時点で指定暴力団員を逮捕することができます。
●3年以下の懲役、500万円以下の罰金
対立抗争時の暴力団事務所の使用制限
指定暴力団相互間の対立抗争等が発生し、暴力団の事務所が、多数の組員の集
合、謀議・連絡等、凶器等の製造保管の用に供されている又はそのおそれがあり、
付近住民の平穏な生活が害され又はそのおそれがある場合、公安委員会は、その
当事者となっている指定暴力団の事務所の管理者又は現に当該事務所を使用し
ている指定暴力団員に対して、期間(3ヶ月以内)を定めて当該事務所をこれらの
用等に供してはならない旨を命じることができます。
この命令に従わない者には罰則が適用されるので、警察は、この時点で指定暴
力団を逮捕することができます。また、命令に当たって事務所に貼り付けた「標章」
を損傷、汚損した者(暴力団員に限らない。)にも、罰則が適用されます。
●この命令に従わない指定暴力団員 → 3年以下の懲役、250万円以下の罰金
●貼り付けた標章を損傷・汚損した者 → 100万円以下の罰金(暴力団員に限らない)
指定暴力団の代表者等の損害賠償責任
指定暴力団員が不法行為を行って他人に損害を与えた場合、民法又は暴力団対策法の規定に基づいて、行為
者だけでなく、組長等代表者に対しても損害賠償請求ができます。組長等代表者は、一定の資力があるので被
害回復が期待できるうえ、暴力団犯罪の抑止、資金源対策にもなります。
下記のいずれかに該当する場合は、暴力団対策法の規定に基づいて指定暴力団の代表者等に損害賠償請求
をすることができます。(第31条、第31条の2)
●指定暴力団の対立抗争に一般市民が巻き添えになった場合
●指定暴力団員が一定の不法行為(恐喝、強要、暴力的要求行為等)を行って他人に損害を与えた場合
損害賠償請求等の妨害行為の規制
指定暴力団員が、損害賠償請求や暴力団事務所撤去のための請求をしようとする
住民に対し請求を妨害する行為を禁止することができます。(第30条の2 〜 4)
暴力追放運動推進センターによる暴力団事務所使用差止請求制度
国家公安委員会から適格団体として認定を受けた各都道府県の暴力追放運動推進センターは、指定暴力団
の事務所の使用によりその生活の平穏等が違法に害されていることを理由として、当該事務所の使用等の差止
めの請求をしようとする付近住民等から委託を受けたときは、当該委託をした者のために自己の名をもって、当
該請求に関する一切の裁判上(外)の行為をする権限を有することとなります。(第32条の4)
不当要求防止責任者の選任と講習の実施
不当要求防止責任者の選任は法的に義務づけられているものではありませんが、責任者を選任して不当要求に
対応する体制を整備することによって、事業者だけでなく使用人等の従業員の被害防止にも効果が期待できます。
事業者は、選任した不当要求防止責任者を公安委員会(警察)に届け出ることによって
●不当要求防止責任者を通じて援助を受けること
●不当要求防止責任者講習を受講させること
ができます。(第14条)
不当要求防止責任者とは、暴力団員などから不当要求があった場合に、組織的に的確な対応をとることがで
きるよう、事業所内の体制を整備し、職場において、その対応要領等についての指導教育などを行う、いわば事
業所における暴力団排除のエキスパートです。
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